2016年5月17日火曜日

黒んぼになった黄金の仏像



話:OSHO(和尚)





ある仏教の尼僧の話を聞いたことがある。

彼女には自分専用の、小さな純金の釈迦仏があって、それを僧院から僧院へと旅をするときに持ち歩いていた。







が、ひとつ問題があった。

毎朝、その仏像に礼拝するときに香をたくのだが、その煙の方向を定めることができず、それがいつも寺のほかの仏像のほうに行ってしまうのだ。

これは困ったことだった。

自分の仏像がそこに坐っているのに、彼女が供養した香の煙やにおいは、ほかの仏像のほうへ行ってしまう。むかしの時代には、今でもそうだが、寺院には多くの仏像があった。

が、彼女は自分の仏像にひどく執着していたから、それは放ってはおけない問題だった。

自分の仏像と、ほかの仏像…。



彼女はとうとう香の煙が、自分の仏像のほうにだけ行く工夫を考え出した。

何しろ、せっかく香を供養しても、ほかの仏像たちがそれを取ってしまう。彼女は細い竹で管をつくり、それを香炉に取り付けて、その竹の管を通ってにおいが自分の仏像の鼻のほうにだけ行くようにした。

しかし、そこで別の問題がおこってきた。仏像の鼻が真っ黒になってしまったのだ。彼女の嘆きようといったらなかった。黄金の仏、純金の仏像なのに、鼻が真っ黒だ。それは似つかわしくなかった。まるで黒ん坊のように見えた…!



彼女は先輩の僧にたずねた。

「いったい、どうしたらようのでしょうか? もし竹をつけなかったら、香の煙は…、どこに行くかわかりません。それはほかの仏像のところへ行ってしまいます。わたしは香を『自分の』仏像に供えているのです。ところが今度は、この竹のおかげで鼻やお顔が真っ黒になってしまいました。いったい、どうしたらよいのでしょう?」

彼女がたずねたその僧は、笑って言った。

「あなたは何と愚かな女性でしょう! すべての仏像は同じだということを、みな同じ方の像だということをご存じないのですか? あなたは自分の仏像に執着しておられるが、み仏の教えのすべては無執着にあるのですよ。

まさしくそれで良いのです。み仏はあなたに、執着は人を汚すということを教えておられるのです。だからお気をつけなさい! 金細工師のところに行けば、あなたの仏像はきれいに磨いてくれるでしょう。

でもこれからは、そのみ仏のことだけをお考えなさい。どの仏像でも、どの仏が香りを取ろうとも…、彼はたぶん、それに価するのです! そしてあなたは、それがどこかに届いたことを喜ぶべきです。なぜなら、これらすべての像は、みな同じ方を表しているからです」






ゴータマ仏陀は言った。

「わたしの像をつくってはならない。なぜなら、人びとは蓮華坐ですわっただけで、目覚めることができると考えるかもしれないからだ。

ただ、このようにしておきなさい、気づきには形がなく、それは内側にしかみつからない、と。ブッダの像のなかにそれを見つけることはできない。また外側の像によって、それを乱されてもならない。

なぜなら、人間の心は何にでもかき乱され、何にでも執着するからだ…」



仏教徒たち、ブッダの信奉者たちは、

「わたしの像をつくってはならない。わたしを形なきもの、花ではなく、香りそのものの象徴にしなさい」

という、彼の最後の言葉を聞かなかった。今日では、ほかの誰にもまして多くの像が、ブッダのために作られている。














引用:空っぽの鏡・馬祖




0 件のコメント:

コメントを投稿