2016年5月18日水曜日

「しゃべらない」という秘密 [OSHO]




話:OSHO(和尚)





禅のサークル(世界)には、ある奇妙な話がある。

それによると動物たちは、私たちの言葉が完璧にわかっているのだという。だが、彼らは口を開かない。私たちのことを理解しているという気配すら見せない。



あるとき、ひとりの禅師がサルにむかって言った。

「私はすっかり承知しておるぞ。わたしの洞察によれば、おまえたちは我々の言葉を知っているのだが、その事実を隠そうとしているのだ」

すると、そのサルは言った。

「ええ、そうなのです。でも、だれにも言わないでくださいよ。ほかの誰のまえでもしゃべるつもりはありませんからね。これは秘密にしておいてください。どんな動物も、あなたがたの言葉を理解できるのですが、ただ、あなたがたの奴隷にはなりたくないのです。動物がしゃべるなどということになれば、たちまち仕事をやらされることになるでしょう」



この古代の物語で思い出したのだが、8歳になるまで全くしゃべらなかった子供がいた。あらゆる努力がなされ、さまざまな検査がおこなわれた。かれの耳は完璧だったし、生理的には何ひとつ障害はなかった。

かれが応答しないというのは、ひとつの謎だった。とうとう彼らは、その子を精神科医のところに連れていったが、それでも何の効果もなかった。



ところがある日、かれは母親にむかって叫んだ。

「母さん、塩はどこにあるの?」

彼は昼食をたべていた。

母親は、じぶんの耳が信じられなかった。

家にいたのは彼女だけだったから、だれも信じてくれそうになかった。その子どもは8年間も啞(おし)だったのだ。



母親は彼にたずねた。

「なぜ8年間も黙っていたの?」

彼は言った。

「いままでは何の問題もなかったんだよ。今日は、ちょうど塩がなかったのさ。いままではしゃべる必要がなかった。しゃべってどうするのさ?」



だが、母親は言った。

「ほかの人のまえでも話してくれないかしら?」

彼はそれを断ると、言った。

「これは僕たちだけの秘密にしてよ。ほかの誰にも言っちゃだめ。そうでないと、ウソをついていると思われるよ。僕は、また黙ったままでいるつもりさ」










引用:空っぽの鏡・馬祖




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