古シ 泉ハ
新シ 水ハ
柳宗悦『心偈』第55
古い古い泉ではあるが、湧き出る水に、いつだとて、古さがあったことはない。
古さと新しさとは、とかく相争うが、新しさも、やがて古くなる新しさなら、本当の新しさとはいえまい。古さを過去のものというが、本当の新しいものには古今を貫く新しさがあろう。古くして、しかも新しいものにこそ、本当の新しさがあろう。
古人はこれを「永遠の今」といったが、この「永遠の今」には、古今の別はなくなる。新しさに対する古さ、古さに対する新しさ、そんなものに、どれほどの値打ちがあろう。永劫の値打ちがあるものは、時間の差別を許さぬ。だから古くして、しかも新しいのである。古からずして、新しいようなものは、未だ新しいとはいえぬ。
流行と新しさとは、本質においては、全く違う。流行の生命は短い。真に新しいものは、時間に流されることはない。一時忘れられても、また新しく甦ってこよう。死がないからである。
引用:
南無阿弥陀仏―付・心偈 (岩波文庫)
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