見テ 知リソ
知リテ ナ見ソ
柳宗悦『心偈』第43
「ナ見ソ」とは「見るな」という否定語。ここで「見
(けん)」というのは、直観の意味である。「知」というのは概念のことである。まず直観を働かせて得たものを、後から概念で整理せよというのである。だからこれを逆にして、概念から直観を得ようとしても、無駄だというのである。
「知るより前に見よ」
「知ることを先にして、見ることを後にしてはいけない」
と警告するのである。
「見る」とは直下に見ることである。「知る」とは、外から眺めて知ることである。見
(けん)からは知が出るが、知から「見」は出ぬ。仮に出たところで「知の範囲を出ない見」というにすぎぬ。
直観は凡てを解放するが、知識は凡てを限定する。だから
「まず見よ、かくて知れ」
というのである。知ってから見ると、見方は「知」に邪魔されて、純に見られなくなる。「見」を「知」でさまたげてはならない。「知」を「見」からのみ出せ。
「信」と「知」との関係もまた同じである。知識から信心は出て来ぬ。知る前に信ぜずして、何を知り 得、どれだけを知り得よう。
引用:
南無阿弥陀仏―付・心偈 (岩波文庫)
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