話:秋月龍珉
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崔郎中という高官がいた。
一日趙州禅師に尋ねて言った、
「あなたさまのような善知識でも、地獄へ堕ちるようなことがありましょうか」。
「それはある。自分はまっさきに入る」
と、趙州は答えた。
「どうして、そういうことがあるのですか」。
趙州は言下に言う、
「わしが堕ちなんだら、こうしてあんたにお目にかかるわけにもいかぬではないか」
…
また他のとき、他の僧が尋ねた、
「犬にも仏性がありますか」。
すると、趙州禅師は言下に、
「有る!」と言われた。
僧は突っ込んだ、
「すでに仏性があるという以上、どうしてこんな汚い獣の皮袋(肉体)の中に入って来たんですか」。
その時である、趙州禅師の眼がきびしく光った。
「それは、彼が知っていて、わざとそうしているのだ」。
…
「知而犯(ちにほん)」
「他(かれ)が知って故(ことさ)らに犯すが為なり」
という趙州の答えの凄まじさは、千年を隔てて文字に対してさえ身震いを感じる。
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