2019年11月30日土曜日

【原文ルビ訓読】禅林句集『和訓略解』八言対 外句増続 001-009


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禅林句集 和訓略解

八言対
外句増続

P476 (243)

1
元亨利貞 天道之常、
仁義礼智 人性之綱。

元亨利貞は天道の常なり、
仁義礼智は人性の綱なり。

元亨(げんこう)利貞(りてい)天道(てんどう)(つね)なり、
仁義(じんぎ)礼智(れいち)人性(にんせい)(こう)なり。

【解】「元亨利貞」、「仁義礼智」は天道人生の根本。「元」は始、「亨」は通、「利」は遂、「貞」は成なり。

P477 (243)

2
以盲為明 以聾為聡、
以危為安 以吉為凶。

盲を以て明と為し 聾を以て聡と為し、
危を以て安と為し 吉を以て凶と為す。

(もう)(もっ)(めい)()し (ろう)(もっ)(そう)()し、
()(もっ)(あん)()し (きち)(もっ)(きょう)()す。

【解】上句は具眼者の作用、下句は無眼子の作用なり。

3[碧眼1
隔山見煙 便知是火、
隔墻見角 便知是牛。

山を隔てて煙を見ては
便ち是れ火なるを知り、
墻を隔てて角を見ては
便ち是れ牛なることを知る。

(やま)(へだ)てて(けむり)()ては
便(すなわ)()()なるを()り、
(かき)(へだ)てて(つの)()ては
便(すなわ)()(うし)なることを()る。

【解】学人の俊発聡明なるハタラキをいふ。

4[宗鏡45
理無不窮 事無不尽、
文無不釈 義無不証。

理として窮めずといふことなく
事として尽さずといふことなく、
文として釈せずといふことなく
義として証めずといふことなし。

()として(きわ)めずといふことなく
()として(つく)さずといふことなく、
(ぶん)として(しゃ)せずといふことなく
()として(あきら)めずといふことなし。

【解】「理事」「文義」悉皆、明め尽くす、真の宗師家のこと。

5
見其利而 不顧其害、
同類相推 倶入禍門。

其利を見て 其害を顧みず、
同類相推て 倶に禍門に入る。

其利(そのり)()て 其害(そのがい)(かえり)みず、
同類(どうるい)相推(あいおし)て (とも)禍門(かもん)()る。

【解】迷の人の境界をいふ。

6[宗鏡52
欲透塵労 須知要径、
将施妙薬 先候病原。

塵労を透らんと欲せば 須く要径を知るべし、
将に妙薬を施さんとして 先づ病の原を候ふ。

塵労(じんろう)(とお)らんと(ほっ)せば (すべから)要径(ようけい)()るべし、
(まさ)妙薬(みょうやく)(ほどこ)さんとして ()(やまい)(おおもと)(うかが)ふ。

【解】「塵労」は煩悩、「要径」は肝要なる道。

P478 (244)

7
鸚鵡能言 不離飛鳥、
猩々能言 不離禽獣。

鸚鵡能く言へども飛鳥を離れず、
猩々能く言へども禽獣を離れず。

鸚鵡(おうむ)()()へども飛鳥(ひちょう)(はな)れず、
猩々(しょうじょう)()()へども禽獣(きんじゅう)(はな)れず。

【解】口真似仏法は一向役に立たぬ。

8
非規矩 不能定方円、
非準縄 不能正曲直。

規矩に非んば方円を定むること能はず、
準縄に非んば曲直を正すこと能はず。

規矩(きく)(あらず)んば方円(ほうえん)(さだ)むること(あた)はず、
準縄(じゅんじょう)(あらず)んば曲直(きょくちょく)(ただ)すこと(あた)はず。

【解】公案の「規矩」により、坐禅の「準縄」に依らずんば、真に悟ることは出来ぬ。

9
不萌枝上 金鳳翺翔、
無影樹辺 玉象囲繞。

不萌の枝上 金鳳翺翔し、
無影の樹辺 玉象囲繞す。

不萌(ふほう)枝上(しじょう) 金鳳(きんぽう)翺翔(こうしょう)し、
無影(むよう)樹辺(じゅへん) 玉象(ぎょくぞう)囲繞(いにょう)す。

【解】「不萌枝」「無影樹」は極楽園にある木にて人間界にはなし、仏界の有様をいふ。



和訓略解
禅林句集 終

大正九年
編集者 山本峻岳
発行所 光融館




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