急ゲド 水ハ
流レジ 月ハ
柳宗悦『心偈』39則
激しく水が流れている。皓々
(こうこう)として月が水面に映っている。だが、水は急いで流れはするが、月はその急流の中に、美しくその姿を止めている。
昔、禅の坊さんたちは、こういう場面を見て、はたと思い当るものがあって、よく詩偈
(しげ)を作った。激流はこの世にまつわる葛藤の姿と見てもよい。諸行無常で、一時も同じ姿には止らぬ。その流れに姿を映しながら、少しも流されない月こそは、無碍
(むげ)の心そのものの姿ではないか。
世に交わって、交わらないもの、有に棹
(さお)さして、有に沈まないもの、「碍
(さわ)りなき」その姿こそ、この月の面影ではないか。その月に、解脱の姿を見つめるのである。
引用:
南無阿弥陀仏―付・心偈 (岩波文庫)
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