源信「白骨観」
此の骨、
我とや為(せ)ん、
我に非ずとや為(せ)ん。
答えて謂う
「我に非ずと、身を離れず。
自他彼此共に白骨なり。
身と命と財との三つ、離散の時、ただ白骨を残し野外に在り。
予が年齢、既に七旬に満つ。
既に此の白骨を顕さん須臾なり。
悲しい哉、此の白骨を顧みず、名利の心地常に断ぜず、手を以て摩で触るるに何ぞ穏やかなること有らん。
倩(つらつら)、一期の栄華を思案するに、ただ白骨を帯して歳月を送る。白骨上に衣裳を荘(かざ)り著(き)て、白骨の身を以て、ただ世を渡る。
此の白骨久しく世に在らず。
憑(たの)みても憑(たの)み難(がた)きは、薄皮の白骨なり。
願わくは仏神よ、
此の白骨を哀れみ、
臨終正念に往生を遂げしめたまへ」
恵心僧都全集. 第3巻 国立国会図書館デジタルライブラリーより |
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