2014年10月22日水曜日

般若の心、人の心 [足立大進]



〜話:足立大進〜


般若心経のなかに

菩提薩埵(ぼーだいさったー)
依般若波羅蜜多故(えーはんにゃーはーらーみーたーこ)
心無罣礙(しんむーけーげー)
無罣礙故(むーけーげーこ)
無有恐怖(むーうーくーふー)

とあります。「菩提薩埵(ぼだいさった)」は仏教において成仏をもとめる修行者です。「般若波羅蜜(はんにゃはらみつ)」は智慧の完成されたもの、お悟りを開いた人の智慧です。「無罣礙(むけいげ)」の罣の字の、冠の部分「罒」は「あみがしら」と言いまして、網を張った状態を示すことから、「引っかかる」ということです。

 ですから、この一文は「仏教の修行者は、真実の智慧によって、心に引っかかりが何もない。だから何も怖いことはない」と言っています。



 薬師寺にいらした故・高田好胤さんは、よく次のようにお説きになった。

「人間の心は、とらわれやすい心、こだわりやすい心、かたよりやすい心。般若心経の心は、とらわれない心、こだわらない心、かたよらない心」


 王陽明の有名な言葉に

山中の賊を破ることは易(やす)く
心中の賊を破ることは難(かた)し

とあります。山の中の賊を退治するにはいくつも方法があり易しい。ところが、心の中の賊を破ることはなかなか難しい、と。


 とらわれやすくて、こだわりやすくて、かたよりやすい心。

 人間の心というものは、そういうもの、と初めから諦めていたら、皆さんの「心に引っかかっているもの」も、少しは楽になる。「ま、そんなこともあるわいな」と、心の引っかかりを大目に見てやってください。



出典:足立大進「即今只今




0 件のコメント:

コメントを投稿