話:大西良慶
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禅に「啐啄(そつたく)同機」という言葉がある。
鶏がタマゴを抱いている。中で雛が育っている。もう出る、という時期が来る。世に出てもいいという時機が熟している。中で雛が「チュッ」という。「チュッ」といいながら、内側から、タマゴの殻をつつく。これが「啐(そつ)」やの。
同時に、抱いている母鶏の方でも、機の熟しているのがわかっている。「チュッ」という声が聞こえるのかどうか、中からたたいているのがわかるのかどうか、母鶏も、同じように外側から強いくちばしで、殻をつつく。「啄(たく)」しよるの。
この、啐(そつ)と啄(たく)との呼吸がぴったり合って、雛という一つの生命が、この世に誕生してくる。ちょっとでも遅れたら、中の雛は死んでしまう。「啐啄異時」になる。あくまで「啐啄同機」でなければならない。
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