2020年9月4日金曜日

焼け野のキギス、夜のツル


話:大西良慶 


焼け野の雉(キギス)

夜の鶴


雉(きじ)がタマゴを抱いているとき、春の野が焼けると、親の雉は、自分の身を犠牲にしてタマゴを守る。


鶴はタマゴを抱くとき、夜も寝ずに夫婦交代で番をしている。生まれてからも、大きくなるまでは夜、見張っていて、知らん顔を見ると、あの長いクチバシでつつく。「夜の鶴」やね。


2020年9月2日水曜日

「啐啄同機」大西良慶

 

話:大西良慶



禅に「啐啄(そつたく)同機」という言葉がある。


鶏がタマゴを抱いている。中で雛が育っている。もう出る、という時期が来る。世に出てもいいという時機が熟している。中で雛が「チュッ」という。「チュッ」といいながら、内側から、タマゴの殻をつつく。これが「啐(そつ)」やの。


同時に、抱いている母鶏の方でも、機の熟しているのがわかっている。「チュッ」という声が聞こえるのかどうか、中からたたいているのがわかるのかどうか、母鶏も、同じように外側から強いくちばしで、殻をつつく。「啄(たく)」しよるの。


この、啐(そつ)と啄(たく)との呼吸がぴったり合って、雛という一つの生命が、この世に誕生してくる。ちょっとでも遅れたら、中の雛は死んでしまう。「啐啄異時」になる。あくまで「啐啄同機」でなければならない。