「甕(かめ)」をコレクションしていた大変偉い聖(ひじり)。
いろいろな甕を集めて大事にしていたのですが、ある時、その大事な甕を縁側に並べたまま奥の院へと修行に出かけてしまいました。修行先でそのことを思い出した偉い聖、気になって仕方がありません。
「あぁ、甕を出しっぱなしにして来てしまった…。もし、盗まれでもしたら…」
修行が終わり、ようやく甕の並ぶ縁側へと帰ってきた偉い聖。
なんとなんと、片っ端から大事な甕を石に打ちつけてブチ割っているではありませんか。
慌てる弟子たち、「これはまた、なんと無体な! 気でも違ったのではありませんか!」
すると偉い聖は、弟子たちにこう答えました。
「これが自分の修行の妨げになることが分かった。だから、こうして全部壊してしまうのだ」
これは鴨長明の仏教説話集である「発心集」にみられる話。
「執着」ということを考えさせる説話の一つです。
出典:鴨長明『方丈記』 2012年10月 (100分 de 名著)
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