『テーラガーター』
仏弟子の告白
中村元
チューラパンタカ長老
557
わたしの進歩は遅かった。わたしは以前には軽蔑されていた。兄はわたしを追い出した。――「さあ、お前は家へ帰れ!」といった。
558
こうして、追い出されて、わたしは僧園の通路の小屋に、がっかりして、静かに立っていた。――なお教えのあることを期待して。
559
そこへ尊き師が来られて、わたしの頭を撫でて、わたしの手を執って、僧園のなかに連れて行かれた。
560
慈しみの念をもって師はわたしに足拭きの布を与えられた。――「この浄らかな物をひたすらに専念して、気をつけていなさい」といって。
561
わたしは師のことばを聞いて、教えを楽しみながら、最上の道理に到達するために、精神統一を実践した。
562
わたしは過去世の状態を知った。見通す眼(天眼・てんげん)は浄められた。三つの明知は体得された。ブッダの教えはなしとげられた。
563
パンタカは、千度も(神通力によって)千度も自分のすがたをつくり出し、楽しいマンゴーの林のなかで坐していた。――〔供養するための〕時が告げられるまで。
564
次いで、師は、時を告げる使者をわたしのところへ派遣された。時が告げられたときに、わたしは〔跳び上って〕空中を通って〔師のもとに〕近づいた。
565
師の御足(みあし)に敬礼して、わたしは一方の側(かたわら)に坐した。わたしが坐したのを知って、そこで師は〔わたしの帰依を〕受けた。
566
全世界の布施(尊敬)を受ける人、もろもろの献供を受ける人、人間どもの福田(福を生ずる田)は、供物を受けたもうた。
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