2016年5月6日金曜日

「まず見よ、かくて知れ」 [柳宗悦]



見テ 知リソ

知リテ ナ見ソ

柳宗悦『心偈』第43



「ナ見ソ」とは「見るな」という否定語。ここで「見(けん)」というのは、直観の意味である。「知」というのは概念のことである。まず直観を働かせて得たものを、後から概念で整理せよというのである。だからこれを逆にして、概念から直観を得ようとしても、無駄だというのである。

「知るより前に見よ」

「知ることを先にして、見ることを後にしてはいけない」

と警告するのである。



「見る」とは直下に見ることである。「知る」とは、外から眺めて知ることである。見(けん)からは知が出るが、知から「見」は出ぬ。仮に出たところで「知の範囲を出ない見」というにすぎぬ。

直観は凡てを解放するが、知識は凡てを限定する。だから

「まず見よ、かくて知れ」

というのである。知ってから見ると、見方は「知」に邪魔されて、純に見られなくなる。「見」を「知」でさまたげてはならない。「知」を「見」からのみ出せ。



「信」と「知」との関係もまた同じである。知識から信心は出て来ぬ。知る前に信ぜずして、何を知り 得、どれだけを知り得よう。






引用:南無阿弥陀仏―付・心偈 (岩波文庫)



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