2021年3月9日火曜日

源信「白骨観」原文

 

源信「白骨観」



此の骨、

我とや為(せ)ん、

我に非ずとや為(せ)ん。


答えて謂う


「我に非ずと、身を離れず。

自他彼此共に白骨なり。


身と命と財との三つ、離散の時、ただ白骨を残し野外に在り。

予が年齢、既に七旬に満つ。

既に此の白骨を顕さん須臾なり。


悲しい哉、此の白骨を顧みず、名利の心地常に断ぜず、手を以て摩で触るるに何ぞ穏やかなること有らん。

倩(つらつら)、一期の栄華を思案するに、ただ白骨を帯して歳月を送る。白骨上に衣裳を荘(かざ)り著(き)て、白骨の身を以て、ただ世を渡る。


此の白骨久しく世に在らず。

憑(たの)みても憑(たの)み難(がた)きは、薄皮の白骨なり。


願わくは仏神よ、

此の白骨を哀れみ、

臨終正念に往生を遂げしめたまへ」


恵心僧都全集. 第3巻
国立国会図書館デジタルライブラリーより


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