2020年10月25日日曜日

「知ってことさらに犯す」趙州禅師

 

話:秋月龍珉



崔郎中という高官がいた。


一日趙州禅師に尋ねて言った、

「あなたさまのような善知識でも、地獄へ堕ちるようなことがありましょうか」。


「それはある。自分はまっさきに入る」

と、趙州は答えた。


「どうして、そういうことがあるのですか」。


趙州は言下に言う、

「わしが堕ちなんだら、こうしてあんたにお目にかかるわけにもいかぬではないか」



また他のとき、他の僧が尋ねた、

「犬にも仏性がありますか」。


すると、趙州禅師は言下に、

「有る!」と言われた。


僧は突っ込んだ、

「すでに仏性があるという以上、どうしてこんな汚い獣の皮袋(肉体)の中に入って来たんですか」。


その時である、趙州禅師の眼がきびしく光った。

「それは、彼が知っていて、わざとそうしているのだ」。



「知而犯(ちにほん)」


「他(かれ)が知って故(ことさ)らに犯すが為なり」

という趙州の答えの凄まじさは、千年を隔てて文字に対してさえ身震いを感じる。




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