2020年8月27日木曜日

大西良慶の「天竜一指」

 

話:大西良慶



指といえば、中国に天竜という禅宗の和尚が居た。

この和尚、問答のとき、誰が出てきても、指を一本、立てはるの。

「天竜一指」という。


この一本の指で、多くの人を教化したという話が、『無門関』に書いてある。

面白いのはそのあとの余談で、修行中の小僧が、これを真似して、誰にも彼にも、指を一本立ててみせた。

天竜和尚は怒らはった。

怒って、手荒い話やが、小僧の指を切ってしまはった。


小僧は泣くわね。

泣きながら、逃げた。

逃げる小僧に、天竜和尚は声かけて呼ばはったの。


小僧はいつもの癖で、指を一本、立てようとしたら、その指がない。

指がない、ということに気づいたとき、小僧は悟ったという。


話は、それだけやの。

それだけやからいいの。



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